NASが故障する確率や対策は?
NASはネットワークHDDとも呼ばれ、パソコンだけでなくスマートフォンやタブレットからもアクセスできて非常に便利です。データのバックアップにNASを利用している人も多いでしょう。
しかし、NASも機械ですから故障することがあります。NASの故障率やデータ損失のリスクについて、今回の記事で解説します。先に結論を述べると「NASはRAIDで運用するのがおすすめ」です。RAID1やRAID5はデータ損失のリスクを軽減してくれます。
NASとは
NASとは「Network Attached Storage」の略語で「ナス」と読みます。ネットワークHDDとも呼ばれ、ネットワークであるLANに接続されたHDDのことです。
NASは普通のHDDと何が違う?
パソコンに搭載されている内蔵HDDや、USBで接続するタイプの外付けHDDがHDDとしては一般的です。こういったHDDは基本的に、パソコンと1対1で接続して使用します。
たとえば、USB接続の外付けHDDに保存したデータを他のパソコンで読み込むためには、つなぎ替える必要があります。
ところが、NASはネットワークに接続しているので複数デバイスが同時に接続可能です。これが一般的なHDDとNASの違いです。
NASがネットワークにつながると何ができる?
NASはネットワーク経由でデバイスと接続できるため、スマートフォンやタブレットとも簡単にデータを共有できます。スマートフォンで撮影した写真をパソコンで編集したり、パソコンで作成した資料をタブレットに表示させたりといった使い方が可能です。
ホームネットワークはもちろんのこと、外出先からでもリモートアクセス機能によってデータを共有できます。
NASに搭載されているRAIDとは?
複数台のHDDを搭載できるNASは、RAID機能がついた製品も多くリリースされています。RAIDとはデータを複数のHDDに保存する機能です。複数のHDDをつなげて利用するため、データ損失のリスクをRAIDは軽減できます。
RAIDの種類について簡単に解説します。
RAID1
RAID1はミラーリングとも呼ばれ、データを保存するときに2つのHDDに同じデータを記録します。このため、同じ内容のHDDが2つ存在することになります。
1つのHDDが破損しても交換によって復旧できます。パソコンからは1つのHDDとして認識されます。
RAID5
RAID5はデータのバリティー(誤り訂正符号)を生成し、データとともに複数のHDDに分散して記録します。RAID5の最小構成は3つのHDDからなります。3つのHDDのうち、どれが1つが故障してもHDDの交換により復旧できます。
パソコンからは1つのHDDとして認識されます。
RAID0
RAID0はストライピングと呼ばれており、NASの故障率を下げる働きはありません。2つのHDDに分散してデータを書き込むため、書き込み・読み込みの速度が上がります。
RAID10
RAID10はRAID1とRAID0を組み合わせて、高速性と耐障害性を両立したモードです。NASの故障率をRAID1で下げつつ、RAID0で高速性を担保しています。
故障率とは
故障率とは「一定期間内に故障する確率」です。故障率を求める式は「故障回数/動いていた時間の合計」で求められます。たとえば、10時間に1回故障するなら、故障率は0.1となります。
その他、年間故障率という用語もあります。HDDの故障率を表す数値では、年間故障率の方がよく使われます。AFR(Annual Failure Rate)と呼ばれ、AFRが50%の場合は2年に1回故障するという意味です。
後述するHDDの故障率も、こちらの年間故障率で計算されています。
データ損失の原因とリスク
データ損失の原因とリスクについて解説します。
ハードウェアの故障が46%
NASの故障のうち、ハードウェアの故障が46%を占めています。人為的なミスなどが6%、論理障害が48%です。
人為的なミスやウイルス対策などとは異なり、ハードウェアの故障は直接的に対策することが困難で予測できません。
経年劣化による故障率増大は3年目から
NASの故障率は3年目から増大します。HDDは1年目の初期故障のリスクを超えると、3年目から故障率が急激に上昇していきます。そのため、常時通電しているNASの場合、定期的にHDDを交換することが効果的です。
データ損失の復旧コストは大きい
NASで物理障害が起きた場合、復旧コストは大きなものとなります。NASの障害は軽いものでも5万円以上かかる場合がほとんどです。物理障害なら数十万円かかることも珍しくありません。くわえて、データ復旧には時間もかかります。
こういったコストを抑えるためには、「故障率の低いHDDを使用する」「定期的にHDDを交換する」といった対策が必要です。
故障率が小さいHDDのメーカーは?
オンラインバックアップサービスを提供しているBackblazeが、HDDの故障統計で年間故障率を発表しています。同社は16万台以上のHDDを運用しており、故障率の統計は信頼性のおけるものです。
2020年の発表によれば、もっとも故障率が少なかったのはSeagate 6TBモデル(ST6000DX000)で0.23%でした。次に、2位から5位はHGSTのモデルが占めました。
このことから、SeagateとHGSTが故障率の少ないメーカーとして有力です。
NASやHDDの運用と故障率
故障率について計算してみます。
以下は「明日、HDDが壊れる確率が1/3000」という条件で計算されたものです。これは1年間で11%、2年で22%、3年で31%、5年で46%の確率でHDDが壊れる計算です。
実際のHDDの故障率はもう少し低めだと思われますが、リスクを大きめに計算しておくことは大事です。
HDD単体では10年で97%のデータ損失
NAS(HDD3台搭載)をRAIDを組まずに運用した場合、データ損失リスクは1/1000となり、10年運用すると97%の確率でデータ損失が起こります。HDD単体より故障率が高くなり、データ損失も起こりやすいです。NASは必ずRAIDを組んで運用しましょう。
NAS(RAID5)では10年で2.1%のデータ損失
NASをRAID5で運用する場合、2台同時に壊れたり、もしくは復旧している間にもう1台が壊れたりすることでデータ損失が起こります。その確率は10年間で2.1%とかなり低めです。
NAS(RAID1)では10年で0.3%のデータ損失
NASをRAID1で運用した場合、さらに故障率は低くなります。10年間で0.3%となり、ほとんどデータ損失は起きません。NASを運用するならRAID1がもっとも耐障害性が高いでしょう。速度を重視するならRAID5やRAID10を組むのがおすすめです。
NASはRAIDで運用して故障率を抑制しよう
NASはRAID1やRAID5で運用していれば高い信頼性を誇ります。ただし、今回の記事で算出した数値はあくまでハードウェアの故障によるものだけです。論理障害や人為的なミス、ウイルスへの感染などは計算されていません。
ハードウェアが原因の故障は全体の46%に過ぎません。RAIDを過信することなく、常にバックアップを取っておくことが必要です。くわえて、3年以上経過したHDDは故障率が高くなります。一定期間が経ったHDDはNASから取り外し、交換するのがおすすめです。